『ヴァニナ・ヴァニニ』 スタンダール(岩波文庫)


書名:ヴァニナ・ヴァニニ
著者:スタンダール
訳者:生島 遼一
出版社:岩波書店
ページ数:221

おすすめ度:★★★★




スタンダールの短編小説五編を収めたのが本書『ヴァニナ・ヴァニニ 他四篇』である。
収録作品のほとんどは『カストロの尼』と同様にイタリアの古記録に基いており、強い情念に導かれていくストーリーが主である。
イタリアに傾倒しているスタンダールの性格をよく表すものと言えるだろう。

本書には『ヴァニナ・ヴァニニ』、『チェンチ一族』、『パリアノ公爵夫人』、『サン・フランチェスコ-ア-リパ』、『ミーナ・ド・ヴァンゲル』が収録されている。
表題作である『ヴァニナ・ヴァニニ』は、貴族の娘ヴァニナと若き炭焼党員との恋を描いている。
しかし、当のヴァニナの行動にまったく共感が持てず、正直に言ってしまうと、あまり優れた作品のようには感じられなかった。

個人的に最も興味深い作品と思えたのは、ドン・ファン風の人物とその家族を描いた『チェンチ一族』だ。
物語が始まるまでのスタンダールによる前置きこそ長いが、その前置き自体もなかなか面白い。
そしていざ話が始まると、イメージしていたドン・ファン的なストーリー展開とかけ離れているのに少々驚くが、これはこれでとても興味深い物語が語られるので、退屈する間もなく読み終わってしまうことだろう。
『パリアノ公爵夫人』と『サン・フランチェスコ-ア-リパ』も、広い意味では同じジャンルの作品と言ってよさそうだ。

本書の中でやや異色の作品となるのが、裕福なドイツ人の貴族令嬢を主人公とする『ミーナ・ド・ヴァンゲル』である。
そうはいっても、タイトルロールであるヒロインの性格や筋立ては、どことなくヴァニナ・ヴァニニに似ていると言えるだろうか。

岩波文庫のスタンダール作品の中でもかなりレアな部類に入る『ヴァニナ・ヴァニニ 他四篇』ではあるが、必ずしもスタンダールのファンでなくても楽しめる一冊であるように思う。
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