『屠殺場の聖ヨハンナ』 ブレヒト(晶文社)


書名:屠殺場の聖ヨハンナ
著者:ベルトルト・ブレヒト
訳者:岩淵 達治
出版社:三修社
ページ数:312

おすすめ度:★★★★




ブレヒトによるジャンヌ・ダルクをモチーフとした戯曲作品三点を収録しているのが本書『屠殺場の聖ヨハンナ』である。
本書には、表題作の他に『シモーヌ・マシャールの幻覚』、『ルーアンのジャンヌ・ダルク裁判1431』が収録されている。
直接的か間接的かの差はあれど、ブレヒトが強い関心を抱いていたジャンヌ・ダルクを扱った作品ばかりを集めた本書の方向性は極めて明確であり、その意味では貴重な一冊であるといえようか。

食肉の缶詰生産を背景に、資本主義の行きつく先を描いた『屠殺場の聖ヨハンナ』は、質、量ともに本書の中心的な作品である。
屠殺場を舞台とすることの効果は抜群で、他の商品の生産現場では得られなかったであろう血生臭さや凄惨さといったものが露骨に醸し出されている。
信仰厚きヨハンナが神や善をたたえ歩くシーンそのものが、一つの皮肉となっているとさえ言えるような気がする。

それと比べると、ドイツ軍に侵攻されるフランスを舞台とする『シモーヌ・マシャールの幻覚』は、舞台や状況はよりジャンヌ・ダルクをテーマにするにふさわしいとはいえ、幾分かインパクトの弱い作品と言わざるをえない。
他方、『ルーアンのジャンヌ・ダルク裁判1431』は歴史劇であり、ジャンヌ・ダルクの裁判から刑死に至るまでを描いている。
劇的効果の高められたシラーの『オルレアンの少女』と比較して読んでみると面白いかもしれない。

本書『屠殺場の聖ヨハンナ』は、ブレヒトに興味のある方であれば必ずや楽しめるはずの本であるが、何しろその流通量が少ないときている。
入手できるときにしておくことをお勧めしたい。
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