『海底二万里』 ジュール・ヴェルヌ(新潮文庫)


書名:海底二万里
著者:ジュール・ヴェルヌ
訳者:村松 潔
出版社:新潮社
ページ数:471(上)、564(下)

おすすめ度:★★★★★




『海底二万里』は、言わずと知れたジュール・ヴェルヌの代表作であるだけでなく、海洋ファンタジー小説、さらにはSF小説における代表作でもある。
決して短い作品ではないが、間延びすることのないストーリー展開に後押しされて一気に読み通すことができてしまうので、ぜひ気軽に読み始めてもらえればと思う。

『海底二万里』の魅力を端的に述べるとすれば、最新鋭の技術を駆使した潜水艦ノーチラス号と、その指揮を執る謎多きネモ船長、この二つであろう。
海中だからこそ起こりうる珍しい出来事の数々もさることながら、全編を通じてネモ船長を中心にミステリアスな雰囲気が漂っているので、読者の興味は尽きないのではなかろうか。

それにしても、『海底二万里』が実際に潜水艦が発明される前の19世紀後半に書かれたことを思えば、時代を先取りしたフィクションであることには驚かされる。
ウェルズのSFが空想的であるのに対し、ヴェルヌのSFが現実に根差したものであるとよく言われているようだが、『海底二万里』はその典型的な例とみなすことができるだろう。

ヴェルヌは、あまりに冷静沈着過ぎるために人としての生気を欠いていると言っても過言ではないような登場人物をしばしば創り上げるが、『海底二万里』においても、その特徴は色濃く打ち出されている。
そうは言っても、登場人物が何らかの危機に直面した時に揃いも揃ってパニックを起こすようでは、読者もかえってうんざりすることだろうから、その極端な冷静さもヴェルヌの人物造形の欠点であるどころか、実はうまくバランスを取っているということなのかもしれない。

『海底二万里』は、読者の年齢層を選ばない、いつ読んでも楽しめる本であり、これまで出版されてきた邦訳の種類の多さもそのことを裏打ちしていると言えよう。
楽しい読書を求める方すべてにお勧めしたい作品だ。
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