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『イリアス』 ホメロス(岩波文庫)

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書名:イリアス
著者:ホメロス
訳者:松平 千秋
出版社:岩波書店
ページ数:454(上)、510(下)

おすすめ度:★★★★★




ヨーロッパの文化に絶大な影響力を及ぼしていた古代ギリシア、その中でもトロイア戦争を扱った『イリアス』と『オデュッセイア』は古典中の古典として広く浸透している。
『イリアス』と『オデュッセイア』でトロイア戦争の顛末すべてが述べられているわけではないにせよ、古代ギリシアを代表する基本的作品のひとつなのでぜひ読んでみてほしい。

アキレウス、オデュッセウス、ヘクトルなどの英雄たちに加え、ゼウス、ポセイドンをはじめとするギリシア神話の神々・・・後世にその名が伝わるここまで数多くの豪華なキャストが一堂に会する文学作品は他にない。
現存するホメロスの二作品はいずれも読みどころに次ぐ読みどころで、一読すればなぜそれらがこれまで何億という人々を強く惹きつけてきたのかがわかるだろう。
『イリアス』では、特に両軍入り乱れての戦闘シーンの迫力が見事で、同時に個の名誉を尊重するギリシア精神にも触れることができる。
枕詞に該当する独特の言い回しなど、馴染みのない表現も多いが、丁寧な訳注が読者の理解を助けてくれ、3000年前の作品を読んでいるとは思えないほどすらすら読めるのもうれしいポイントだ。
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右はブラッド・ピットがアキレウスを演じた映画『トロイ』。
『イリアス』の前後の主要な出来事をも含めているので、トロイア戦争を俯瞰することができる秀作だ。
一部の例外を除き、もっぱら人間の世界にのみ焦点を絞って製作されていて、下手に神々を登場させてケチなB級映画に堕することを回避している。
英雄たちの繰り広げる数々の名場面は見応えがあるが、大幅な筋の改変も見られるので、原作に忠実な映画ではないことに関しては賛否両論だろう。

『イリアス』の原文は詩であるが、この岩波文庫版は詩文の韻律を生かそうとして七五調を採用することもなく、たいへん読みやすい現代文に翻訳されている。
ただ、『イリアス』には人物・神々や地名など、膨大な数の固有名詞が出てくるので、カタカナの氾濫に戸惑う読者もいるかもしれない。
しかし、主要な登場人物さえ把握してしまえば、ギリシア悲劇の面白みも格段に増す上に、後世の言及や絵画に対する造詣も深まることだろう。
欧米文学最大の古典を、『オデュッセイア』と合わせてぜひ繰り返し読んでみていただきたい。
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