『吸血女の恋』 テオフィル・ゴーティエ(現代教養文庫)


書名:吸血女の恋
著者:テオフィル・ゴーティエ
訳者:小柳 保義
出版社:社会思想社
ページ数:231

おすすめ度:★★★★




ゴーティエの短編作品四編を収録したのが本書『吸血女の恋』である。
本書には『吸血女の恋』の他に『カンダウレス王』、『千二夜物語』、『双つ星の騎士』が収録されている。
「フランス幻想小説」という副題が付されてはいるものの、必ずしもすべての収録作品が同程度に幻想的であるわけでもないので、幻想小説ばかりに期待しないほうがいいかもしれない。

若い聖職者が怪しい美女に恋するという『吸血女の恋』は、ゴーティエの作品の中でも特に有名なものの一つで、怪奇趣味と芸術至上主義が見事に融合し、ゴーティエらしい独特の世界観を創り上げていると言える。
この作品は、タイトルが『死霊の恋』とか、発表後の改題もあって『クラリモンド』と訳されることもあるようだが、個人的には『吸血女の恋』という本書が採用したタイトルが一番面白みのないものであるような気がするがいかがだろうか。

絶世の美女が登場する『カンダウレス王』も、執拗かつ巧みに美女を創作し続けたゴーティエらしい作品と言えるだろう。
史実に基づいているだけあって幻想性は弱いし、物語がそれほど起伏に富んでいるわけでもないのだが、本書にしっくり収まるだけの存在感を放っている。
一目で恋に落ちてしまうような美女が登場するのは『千二夜物語』も同様で、イスラム世界を舞台としている点は、当時のフランスの流行に沿ったものとみなしてよいのかもしれない。

ゴーティエの作品は日本であまり人気がないからなのか、再版がされているとはいえ、本書『吸血女の恋』の出版状況は非常に乏しいと言える。
ゴーティエの作品を読みたいという方が失望するとは考えにくい一冊なので、興味のある方は躊躇せずに入手されることをお勧めしたい。
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