『平和の玩具』 サキ(白水Uブックス)


書名:平和の玩具
著者:サキ
訳者:和爾 桃子
出版社:白水社
ページ数:321

おすすめ度:★★★★




没後の出版であるとはいえ、サキの短編作品33編を収めている短編集が本書『平和の玩具』である。
岩波文庫『サキ傑作集』やちくま文庫『ベスト・オブ・サキ』に優れた作品を提供していた『平和の玩具』ではあるが、白水Uブックスから本邦初の完訳として出版されたのであって、サキのファンにとってはたまらない一冊となっている。

本書には『平和の玩具』、『クリスピーナ・アムバーリーの失踪』、『セルノグラツの狼』、『奇襲戦術』、『七つのクリーマー』といった有名どころも入ってはいるが、サキの作品をけっこう読んできた読者でもいくつか新しい作品に出会うことができるはずだ。
ベスト・オブ・サキ』第二巻との重複が多いとはいえ、『謝罪詣で』や『腑抜け』といった10編以上の新しい作品に触れられるのはうれしい限りである。
そうはいっても、他の選集と重複している作品のほうが、バルカン戦争時に書かれたやや毛色の異なる作品は別としても、質的に上であるのは間違いないように思われるのではあるが。

本書には挿絵も入ってはいるが、それほど数は多くないのであまり期待しないほうがいいかもしれない。
また、本書には付録として、「親族たちが述べたサキ」と題して、親族が書いた手紙がいくつか訳出されている。
サキの人となりを知る上では格好の素材と言えるが、当然ながらサキの読者がサキの作品に期待するような機知やブラックユーモアは欠けていて、本編が愉快であるだけに、本編の直後に読むと退屈さが倍加されてしまうような気がする。

サキの短編作品はタイトルに当てる訳語のバリエーションが比較的豊富であり、他の本で既に読んだ作品とそうでない作品がしばしば判別しにくいことがある。
しかし、一編一編は短いものであるし、再読しても楽しめるのがサキなので、本書『平和の玩具』も通読されることをお勧めしたいと思う。
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