『地軸変更計画』 ジュール・ヴェルヌ(創元SF文庫)


書名:地軸変更計画
著者:ジュール・ヴェルヌ
訳者:榊原 晃三
出版社:東京創元社
ページ数:242

おすすめ度:★★★☆☆




ヴェルヌの代表作『月世界へ行く』の続編に当たるのが本書『地軸変更計画』である。
続編とはいっても今度は宇宙旅行の話でもないし、登場人物が重複していたり、『月世界へ行く』の内容への言及が多少あるという程度なので、必ずしも『月世界へ行く』を先に読んでおく必要はないと思う。

アメリカで、北極周辺の土地の競売を行うという風変わりな広告が出された。
ヨーロッパの列強諸国を巻き込んだその競売で北極一帯を競り落としたのは、かつて月へと砲弾を打ち上げた、あの大砲クラブだった。
前人未到の北極地域を買い占めた大砲クラブには、またしても壮大な計画があり・・・。
『地軸変更計画』のストーリー展開は、SF作品にしてはかなりゆっくりめである。
それでいてさほど退屈さが感じられないのは、ヴェルヌのストーリーテラーとしての巧みさもあるかもしれないが、科学的なうんちくが少なめだからというのも一因かもしれない。

本書を読み進めていくうちに読者はお気付きになるだろうが、『地軸変更計画』という邦題自体が、実は極度のネタバレである。
大砲クラブが地軸を変更しようとしているという話は、序盤ではまったく語られず、中盤になってやっと出てくる話なのだから、大砲クラブの秘密を明かしたこのタイトルが、ヴェルヌが醸し出したミステリアスな雰囲気を弱めているのは事実だろう。

しかしながら、物語の概要を一言で明かしてしまっているタイトルにもかかわらず、『地軸変更計画』の面白さが完全に損なわれてしまったわけではない。
登場人物の描写が乏しく精彩を欠いているように見受けられるし、物語も起伏に富んでいるとは言い難いのだが、地軸を変更しようという画期的な発想は、最後のページまで読ませてしまう独特の面白みを備えている。
強くお勧めするわけではないが、読んで損はない作品として紹介しておきたい。
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