『互いの友』 チャールズ・ディケンズ(こびあん書房)


書名:互いの友
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:田辺 洋子
出版社:こびあん書房
ページ数:461(上)、499(下)

おすすめ度:★★★★




ディケンズが完成させた最後の長編作品となるのが本書『互いの友』である。
莫大な遺産が絡む、緩めのミステリー仕立ての小説というディケンズお得意のものとなっていて、戯画化をふんだんに用いたユーモアセンスも随所に光っている。
『互いの友』がディケンズの代表作に数えられることはほとんどないものの、本書がディケンズらしい作品であるのは間違いないだろう。

莫大な遺産を受けるはずだった青年が、テムズ川で死体となって発見された。
宙に浮いてしまった遺産は、使用人だった人のいい老夫婦が受け取ることになったのだが・・・。
全般に、そこまで深刻な事件性があるわけでもなく、緊迫感や意外性に富んでいるということもなく、ストーリーの展開は非常にゆっくりなので、ディケンズの文章を読んでいて楽しいと感じられる読者向けの作品と言えようか。
ただ、ユーモアあふれる言い回しが頻繁に現れる『互いの友』は、過度のユーモアが時として文意を汲み取りにくくしてしまっており、読者に混乱をもたらしてしまっている箇所さえあるかもしれない。

プロットが行き当たりばったりであったディケンズ初期の作品とは違い、後期作品である『互いの友』もまた緻密な構成の下に書かれた作品となっている。
多くの登場人物が巧みに絡み合っていて、それがあまりに巧みであるだけに、うまく出来過ぎとの印象を受ける読者がいても不思議はないと思う。

『互いの友』をミステリー小説として読むと期待はずれもいいところであろうが、やはりディケンズの小説の本領は人物描写にあるはずだ。
とても長い作品、ひょっとすると内容の割りに長すぎる作品ではあるが、それだからこそ、ディケンズはそれぞれの登場人物を描ききっているという印象を読者は受けるのではなかろうか。
ディケンズの筆致を好む彼のファンならば、必ずや楽しめる一冊としてお勧めしたいと思う。
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