『夢想』 エミール・ゾラ(論創社)

夢想 (ルーゴン・マッカール叢書)夢想 (ルーゴン・マッカール叢書)
(2004/12)
エミール ゾラ

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書名:夢想
著者:エミール・ゾラ
訳者:小田 光雄
出版社:論創社
ページ数:264

おすすめ度:★★★★




ルーゴン・マッカール叢書の第十六巻に当たるのがこの『夢想』。
叢書内の他の作品との結びつきはきわめて弱く、ルーゴン家の血筋に属する物語ではあるものの、主人公以外の一族の人間の登場は皆無に等しく、若干の遺伝性がほのめかされる程度である。
人の腹黒さがほぼ描かれておらず、とても清く美しいストーリーとなっているが、そういう意味ではゾラらしからぬ小説だとも言えるだろうか。
宗教色が濃いので叢書の中では『ムーレ神父のあやまち』に近いが、個人的にはこちらの『夢想』のほうをお勧めしたい。

主人公である孤児のアンジェリックは、教会の傍らで寒さに震えているところを信心深く親切な夫婦に拾われ、そこの娘として暮らすことになる。
聖人伝の集大成である『黄金伝説』に魅了され、彼女は聖なるものの訪れを待ち焦がれながら成長していったが、美しく育った娘はいつしか聖人以外の相手にも恋をするようになり・・・。
作品に描かれる世界の狭さはゾラの作品中でも随一だろうが、それだけ心の内部の深さ、いや、高みと表現したほうがより正確だろうか、そういった崇高なものが描かれていて、全体的に非常に美しくまとまっている。

カトリック世界には多少浸透しているかもしれない『黄金伝説』も、日本における文学作品としての知名度は相当低いことだろう。
かく言う私も、近年になって『黄金伝説』が入手しやすいかたちで出版されたというのは知っていたが、実際に手に取ってみたことはない。
平凡社ライブラリーから全4冊で出ているらしいので、ゾラの『夢想』を読んだのを機に、いつか読んでみたいと思う。
ゾラの『夢想』は、おのずと『黄金伝説』に興味をわかせる、そんな作品なのだ。

『夢想』はルーゴン・マッカール叢書中、最も短い作品でもあるので、ぜひ気軽に読んでみていただきたい。
そしてこの『夢想』はハッピーエンドなのか、それともバッドエンディングなのか、各々の読者がその心で感じ取ってみていただければと思う。
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