『グランド・ブルテーシュ奇譚』 バルザック(光文社古典新訳文庫)

グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)グランド・ブルテーシュ奇譚 (光文社古典新訳文庫)
(2009/09/08)
オノレ・ド バルザック

商品詳細を見る

書名:グランド・ブルテーシュ奇譚
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:宮下 志朗
出版社:光文社
ページ数:256

おすすめ度:★★★☆☆




表題作である『グランド・ブルテーシュ奇譚』を含む5編を収めた本書、「バルザック短編集」と銘打ってもよかっただろう。
読者は短編でも優れた作品を残しているバルザックの、そのごく一部分を知ることができる。

『グランド・ブルテーシュ奇譚』は、嫉妬深い夫に浮気がばれたらどうなるかという逸話の一つとして、『田舎のミューズ』でその名が紹介されている。
田舎のミューズ』においては、ここに繰り返すまでもない有名な話として扱われていたので、読者はこの本でその書かれなかった挿話を読むことができるというわけだ。

『ことづて』は、ある人の愛人のもとへ伝言を頼まれるという話で、収録作品の中で最も感動的だ。
とはいえ、夫や妻以外に愛人を持つことが今よりはるかに一般的だった当時と比べると、読まれ方も変わってきているのだろうか。
『ファチーノ・カーネ』は『バルザック芸術/狂気小説選集〈2〉ガンバラ 他』にも収録されているが、盲目の老人の語る興味深いエピソードが中心となる短編で、読者を宙ぶらりんに留め置くという憎い終わり方をしてくれる。
バルザックの全作品の中でも非常に異質な構造を持つのが『マダム・フィルミアーニ』。
口さがない人々の証言を集めたような斬新なスタイルが面白いが、発表された当初はそのスタイルがどう受け取られたのだろうか。
『書籍業の現状について』はタイトルどおり、小説ではなく評論的な小品。
バルザックの小説を求める読者にとってはあまり関心が持てないだろうし、同じ紙幅を割くのであれば短編小説を入れてくれたほうがよかったように思う。

いろいろな種類の短編を集めただけに、この一冊で読者が頭の中にバルザック像を作り出そうとすれば、随分といびつなバルザックが出来上がるに違いない。
金や女に対する欲望をとことん描いたバルザックなのに、それが描かれているのはせいぜい『ファチーノ・カーネ』ぐらいのものだ。
よく言えば幅広く収録、悪く言えば雑多な寄せ集め、そんな感じを受ける一冊だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク