『白痴』 ドストエフスキー(岩波文庫)

白痴〈上〉 (岩波文庫)白痴〈上〉 (岩波文庫)
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(1994/03/16)
ドストエーフスキイ

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書名:白痴
著者:ドストエフスキー
訳者:米川 正夫
出版社:岩波書店
ページ数:627(上)、555(下)

おすすめ度:★★★★★




ドストエフスキーの傑作長編、『白痴』。
登場人物のロシア人らしさ、複雑な恋愛模様、善への志向など、きわめてドストエフスキーらしい作品だ。
純真無垢な心の美しさを描ききった文学作品としては、『白痴』は最高峰に位置することだろう。
主題に対する予備知識を必要としないので、それだけ多くの人の心を動かすことができる小説だと思う。

『白痴』の主人公であるムイシュキン公爵は、一切の侮蔑をこめずに言うが、「ばか」である。
具体的にどのように「ばか」なのかは作品で読んでもらうこととして、ここでは私がそんな「ばか」に強い憧れを持っているとだけ述べておくことにしよう。
彼ほど素晴らしい「ばか」には、現実世界はもちろん、小説の世界においてもなかなかお目にかかれるものではないが、ひょっとするとドストエフスキーが愛読していたというディケンズの作品にその原型を見出すことができるかもしれない。

『白痴』の原題は、英語では idiot に相当するロシア語のようで、語感からすると『白痴』は少々行き過ぎらしいが、かといって『イワンのばか』でもあるまいし、ドストエフスキー作『ばか』とするわけにもいかず、『白痴』が定着している。
今日の日本では「白痴」には差別的な意味合いがあるとして使用を避ける傾向があるようだが、ドストエフスキーの『白痴』がもっと読まれていたならば、「白痴」は知能の発達こそ不完全なものの、美しい心を持った人を指す言葉ととらえられていて、差別的とはみなされなかったのではなかろうか。
少なくとも私は『白痴』を読んで以来、「白痴」の語にそういった観念を抱いている。

必ずしも過度ではないはずの正直さえもが「ばか正直」と呼ばれることがある、私たちが暮らしている社会はそういうところだ。
しかし、何を「ばか」とするべきなのか、「ばか」であることは悪いことなのか、真剣に考えさせられる名作がこの『白痴』だ。
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