『悪霊』 ドストエフスキー(新潮文庫)

悪霊 (上巻) (新潮文庫)悪霊 (上巻) (新潮文庫)
(2004/12)
ドストエフスキー

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悪霊 (下巻) (新潮文庫)悪霊 (下巻) (新潮文庫)
(2004/12)
ドストエフスキー

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書名:悪霊
著者:ドストエフスキー
訳者:江川 卓
出版社:新潮社
ページ数:651(上)、758(下)

おすすめ度:★★★★★




ドストエフスキー四大長編の一つに数えられる『悪霊』。
タイトルから察せられるように、決して明るい雰囲気の話ではないが、ドストエフスキーの長編の中では最も政治思想色が濃く、それだけ重厚な作品となっている。
読みやすい本より読み応えのある本を求めている人には非常にお勧めである。

『悪霊』は革命運動家たちの間で実際に起こった殺人事件を元に書かれた作品だが、ドストエフスキーの力量によってオリジナルの事件はほとんど原形をとどめていないといっても過言ではないだろう。
それほどに小説世界が一個の完結したものとして成り立っている。
19世紀といえばロシアのツァーリズムが徐々に瓦解していく世紀でもあるわけだが、水面下で行われる運動に従事する人々を描くことで、作品は終始ミステリアスな雰囲気で満たされているし、血の予感が読者までひしひしと伝わってもくる。
鮮明に描き分けられた特徴的な人物たちが見事に絡まり合う、ドストエフスキーらしい複雑な人間模様は、最後の最後まで読者の興味をそそってやむことがない。
内容が軽薄ではないにもかかわらず読ませる力を備えた本があるとすれば、それはまさしくこの『悪霊』だろう。

『悪霊』は難しいという感想をよく耳にする。
確かに、革命に関する政治思想や当時のロシアの政治状況を踏まえて読めば、小説に描かれた世界の見え方もだいぶ変わってくるはずだ。
そういう意味では、難解な作品であるという判断は間違ってはいない。
でもそれはドストエフスキーの真意を、十分な予備知識もなしに無理に探ろうとするからなのであって、私は『悪霊』に限らず、読者を魅了する力のある文学作品というものは深いことを考えずに読み進めていくだけでもかなり楽しめるように思うのだがいかがだろうか。

内容からするに『罪と罰』ほど一般受けはしないかもしれないが、ストーリー展開や登場人物の造形の巧みさには感心させられるばかり。
罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』と並び、ドストエフスキーの最高傑作と称されることのある『悪霊』、ドストエフスキーを語る上でこれは必読だ。
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