『アメリカ紀行』 ディケンズ(岩波文庫)

アメリカ紀行 (上) (岩波文庫)アメリカ紀行 (上) (岩波文庫)
(2005/10/14)
ディケンズ

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(2005/11/16)
ディケンズ

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書名:アメリカ紀行
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:伊藤弘之、下笠徳次、隈元貞広
出版社:岩波書店
ページ数:433(上)、435(下)

おすすめ度:★★★☆☆




若きディケンズがアメリカに渡り、各地を旅して回った際の記録がこの『アメリカ紀行』。
ユーモアと人間味あふれる筆致は非常にディケンズらしいところであるが、率直な感想が批判的とみなされてアメリカではこの作品は不人気だったらしい。
当時のアメリカ社会の雰囲気、特に旅行事情を知る上では貴重な資料となることだろう。

渡米当時、ディケンズの名はすでにアメリカでも広く知られていて、一般の観光客では出入りできないような場所に入ることを許されたり、会うことのできない人に会うことができたり、ただしそれと同時に、イギリスからやってきた有名人に会いたいというだけの表敬訪問をも無数にこなすことになったわけだが、いずれにせよ人気作家ならではの便宜を得ることができた。
そういうわけで、通常の旅行記とは幾分視点が異なるような印象を受ける。
普遍的というと言い過ぎだろうが、各地の上流階級の面々との触れあいや行政上の施設への視察を通して、私的な経験を綴った紀行文では達し得ない部分にまで筆が及んでいるのだ。
そこが同じディケンズの紀行文である『イタリアのおもかげ』との作風の最大の違いであろう。

同時期のアメリカ社会を取り扱ったものとして、トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』がある。
これは表題のとおりもっぱら政治体制に対する本であるが、アメリカ社会を肯定的にとらえている部分が多いので、ヒューマニズムに則った批判的な傾向の強いディケンズの『アメリカ紀行』と読み比べてみると面白いはずだ。

この『アメリカ紀行』、ディケンズのことをあまり知らない人が読んでも楽しめるだろうが、どちらかといえばディケンズを知っている人のための本のように思える。
ディケンズ作品の読者であれば、『オリヴァ・ツウィスト』や『ニコラス・ニクルビー』の作者らしさを感じ取ることができる旅行記であるに違いない。
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