『永遠の夫』 ドストエフスキー(新潮文庫)

永遠の夫 (新潮文庫 (ト-1-6))永遠の夫 (新潮文庫 (ト-1-6))
(1979/06)
ドストエフスキー

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書名:永遠の夫
著者:ドストエフスキー
訳者:千種 堅
出版社:新潮社
ページ数:318

おすすめ度:★★★★




妻に浮気されていた男と、その浮気相手を描いたのがこの『永遠の夫』。
発表順でいうと『白痴』と『悪霊』の間に位置する作品で、ドストエフスキーの円熟期の作と言えるだろう。
思想性よりも物語性が強いために非常に読みやすいので、代表作というと語弊があるだろうが、幅広い読者に受け入れられうる作品だ。

白痴』の後に発表された作品だけに、『永遠の夫』というタイトルから一途な夫を描いた純愛物語を予想される方もいるかもしれないが、そういうわけではない。
社会的立場や自らの気弱さから永遠に夫でい続けるしかできない男、そんな男の悲哀を喜劇的な描写を交えながら書き上げたのがこの『永遠の夫』だ。

間男される夫といえば、イギリスやフランスなどでは喜劇向けの格好のテーマとして、古くから滑稽で無能な人物としてからかいの対象になってきた。
日本にも「知らぬは亭主ばかりなり」ということわざがあり、これも浮気に気付かずにいる亭主を嘲った表現だ。
「永遠の夫」は妻の浮気に気付いていたのだろうか、また、間男されていることを嘲笑されていたことも知っていたのだろうか。
登場人物が少ない作品だからこそ、「永遠の夫」の心理は比較的読み解きやすい。
作品を読み進めていくうちに「永遠の夫」の全貌が明らかになっていくが、答えが与えられるのを待たず、ぜひ序盤から深読みしてみてほしい作品だ。

それほど長い作品ではないが、予想外の出来事は程よく読者を楽しませてくれる。
作品の締めくくり方も悪くなく、『カラマーゾフの兄弟』のように強烈なインパクトを受ける読者はいないにしても、同様に退屈に感じる読者もまたいないのではなかろうか。
「浮気」という時代や場所を問わない普遍性のあるテーマは、悲しいかな、それこそ「永遠のテーマ」なのかもしれない。
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