『猟人日記』 ツルゲーネフ(岩波文庫)

猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)
(1958/05/06)
ツルゲーネフ

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猟人日記 下 (岩波文庫 赤 608-2)猟人日記 下 (岩波文庫 赤 608-2)
(1958/10/05)
ツルゲーネフ

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書名:猟人日記
著者:ツルゲーネフ
訳者:佐々木 彰
出版社:岩波書店
ページ数:302(上)、306(下)

おすすめ度:★★★★




ツルゲーネフの代表作の一つに数えられる短編集、『猟人日記』。
ツルゲーネフ自身は貴族階級の人間だが、この作品においては狩猟中の有閑階級と貧しい人々との交わりをとても柔和なタッチで描いていて、農奴制の廃止にも大きな影響を与えたらしい。
本作が原因で、農奴制に反対したとみなされたツルゲーネフが逮捕されたと知れば、『猟人日記』に興味の湧いてくる方もおられることだろう。

貧しいながらも健気に生活している人々を、温かな目で見守る「猟人」。
上流階級に属する「猟人」に対しては、気持ちのよい接待をしてくれる優しい人々とも言えるが、裏を返せば身分の格差を如実に示しているという、社会の悲惨さもはらんだ関係性だ。
そうはいっても、弱者に優しい「猟人」の人間的魅力は、そのままツルゲーネフの以後の作品におけるぬくもりに通ずるのではないだろうか。

『猟人日記』を語る際に忘れてはならないのが二葉亭四迷だ。
彼は『猟人日記』の中の一編を「あひゞき」として翻訳紹介していて、それが後に白樺派などに多大な影響を与えることになる。
明治・大正期にはロシアの代表的な作家としてツルゲーネフがよく読まれていたらしいが、現在ではドストエフスキーとトルストイという二大巨匠に押されがちになってしまっているようだ。
ツルゲーネフのようにたいへん魅力のある作家があまり読まれなくなっているというのは非常に残念なことに思われる。

美しく静かな林を練り歩く「猟人」と共に、ロシアの大自然と素朴な庶民に触れる。
ロシア文学中、最も人間味あふれる作品の一つである『猟人日記』、読んでいる人まで優しい気持ちになることのできる名作である。
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