『父と子』 ツルゲーネフ(新潮文庫)

父と子 (新潮文庫)父と子 (新潮文庫)
(1998/05)
И.С. ツルゲーネフ

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書名:父と子
著者:ツルゲーネフ
訳者:工藤 精一郎
出版社:新潮社
ページ数:357

おすすめ度:★★★★★




保守的な父親と進歩的な息子との、世代間の主義・主張の対照を描いたのがこの『父と子』である。
宗教や科学、政治思想や社会思想など、世代が変わればその信ずるところも変わってしまうという側面がここまで明確に示される小説もあまり多くはないだろう。
初恋』と同様、ツルゲーネフの代表作であるばかりではなく、当時のロシア文学の中でも非常に高い評価を得ている傑作なので、ぜひ読んでみていただきたい。

大学を終えた息子とその友人が、田舎の父の元へ帰ってくるところから物語は始まる。
再会を楽しみにしていたにもかかわらず、それぞれが看過できない溝を感じてしまい、価値基準の一致しない親子関係はどことなくぎくしゃくしたものとなる。
愛すべき相手であるとはわかっているものの、お互い相手を古すぎて、もしくは新しすぎて理解しがたい存在であると思ってしまうのだ。
ツルゲーネフの優しい筆は『父と子』においても存分に発揮されていて、ペーソス漂う素晴らしい作品に仕上がっている。

いつの世においても、矛盾に満ちた社会や権威を否定するのは比較的容易なことで、学をつけた人間は自信を持ってその批判を行う。
そのような斜に構えた姿勢の登場人物に、友人や親戚などの身近な人や、ひょっとすると自身の経験など、思い当たる節のある読者もいるのではなかろうか。
とはいえ、『父と子』で述べられるニヒルな見解は、今日の読者からすればすべてがすべて破壊的な虚無主義者の言とは思えないはずである。
現代人は昔の人々と比べればニヒリスト的傾向を強めていっているのかもしれない。

ツルゲーネフの小説は決して難解ではないので、やや思想性の強い作品であるこの『父と子』でさえ、たいていの読者はすらすら読めることと思う。
仮に述べられている思想について理解できない部分があっても、親子のジェネレーションギャップをテーマにした作品として読むだけでも十分楽しめるはずなので、一読をお勧めしたい。
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