『ルーヂン』 ツルゲーネフ(岩波文庫)

ルーヂン (岩波文庫 赤 608-3)ルーヂン (岩波文庫 赤 608-3)
(1961/08/05)
ツルゲーネフ

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書名:ルーヂン
著者:ツルゲーネフ
訳者:中村 融
出版社:岩波書店
ページ数:219

おすすめ度:★★★★




ロシア文学の一つの系列として、「余計者」と呼ばれる人間を描いたものがある。
エヴゲーニイ・オネーギン』、『オブローモフ』などと並び、『ルーヂン』はその代表とされる作品の一つであり、長編作品ながら短めなので、「余計者」の典型を知るうえでは最適の一冊である。
ツルゲーネフは「余計者」を主人公にした作品を何点か発表しているので、また、「余計者」という語自体がツルゲーネフに由来するらしいので、ロシア文学に興味のある人であればツルゲーネフの描いた「余計者」をぜひ一度読んでみてほしいと思う。

頭の中で観念をこね回すことに明け暮れ、現実行動を起こさないでいる男、ルーヂン。
高い理想を掲げ、優れた知性を披露するものの、いざという時の決断力に欠け、結局積極的な行動を避けて通ってしまう。
当時のロシアのインテリゲンチャ、その一つの典型として読むことができるだろう。

政治情勢の変化により青年たちの活躍の場が奪われたことが、社会的に有益な働きをなさない多くの「余計者」を生んだ一因だと言われている。
しかしこの「余計者」という概念に向き合ってみたとき、自らは「余計者」ではないと断言できる人が今日の日本にどれだけいるのだろうか。
そういう意味では、とても意味深長で息の長いテーマを含んでいる作品だといえよう。
果たしてルーヂンは「余計者」なのか、結末まで読み通した上で、各々の読者が判断してもらえればと思う。

「余計者」を主人公にした作品は、同じくツルゲーネフの『父と子』を除けば、たいていがあまりメジャーな作品ではない。
この『ルーヂン』にしても、個人的にはいつ再版されてもおかしくない興味深い小説だと思うのだが、中古でしか手に入らないのが現状だ。
『ルーヂン』をはじめ、ロシア文学の一潮流である「余計者」が再評価される日がやってくることを期待したい。
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